口腔外科治療、顎関節症治療など
Oral Surgery
口腔外科
Oral Surgery
歯科疾患も状況によっては外科的な処置を必要とする場合があります。代表的なのは抜歯ですね。歯を保存するためにも歯に由来する病巣を外科的に取り除く場合や、重度の歯周病では外科的な治療をすることもあります。
具体的には以下のような例があります。
埋伏智歯(埋まったままの親知らず)
親知らずは必ず抜く、というわけではありませんが、一番奥にある歯なので、現代人は顎骨のスペース不足により正常に生えることができない場合が大変多くあります。4本とも正常に生えている人は稀です。
歯が埋まったままだと歯冠部(頭部)周囲には隙間ができてしまいます。歯冠部のエナメル質は硬くツルツルなので周囲組織と結合しないからです。すると口腔内細菌がその隙間に入り込んで智歯周囲炎を引き起こします。歯周病と似たような状態になるのです。
さらには炎症が隣の歯まで波及して骨を破壊することもあります。こうなると親知らずが原因で顔まで腫れたなんてことになります。時には首のほうまで炎症が波及するケースもあります。
また親知らずは歯の並びが正常ではないことが多いので、隣接部には物が詰まりやすい、自浄作用が働きにくいことなどからむし歯のリスクも高まります。
この様な場合には親知らずを抜歯する必要があります。その際歯冠部が大体見えるようなら通常の抜歯とあまり変わらず抜くことができます。上の歯のほうが下の歯に比べ抜くのも簡単だしその後の経過も良好なことが多いです。骨の質に違いがあるためです。
歯が埋まっていて、特に下の歯が横向きになっていると、切開したり歯を切断したりして摘出しなければなりません。その場合術後にやや痛みや腫れが出る場合があります。
嚢胞(のうほう)
嚢胞は顎骨内に膿がたまった状態のことです。むし歯由来で根管を通じて歯根の先端部にできたものを「歯根嚢胞」と言います。治療法の第一選択は根管治療ですが、経過が悪い場合は外科的に歯根尖ごと嚢胞を摘出(歯根端切除術)します。外科的歯内療法とも呼ばれます。
口腔内の小唾液腺に由来し粘膜部にできる粘液貯留嚢胞も時々見られる疾患です。水ぶくれのようにプクっと膨らみができます。これも原因となる小唾液腺を、粘膜を切開して摘出します。
口腔粘膜疾患
口腔粘膜にできる病気はいろいろありますが、最もよく見られるのはいわゆる口内炎です。口内炎は通常1~2週間で自然に治癒しますが、頻繁に繰り返す方もしばしばみられます。口内炎を外科的に処置することは稀ですが、他の疾患との鑑別が大切です。治りが悪い口内炎は早めに受診してください。
線維腫
頬や舌などお口の中の粘膜にみられる良性腫瘍です。ぷっくりとしたイボのようなものが粘膜に形成されます。歯や入れ歯などが当たる慢性的な物理的刺激が、線維腫を形成する原因とされています。よく頬や舌や噛んでしまうという場合は、お口の中に異変がないかチェックしましょう。治療法としては、手術によって線維腫の部分を摘出します。
小帯異常
上唇をめくると真ん中に歯肉につながる筋があります。これを上唇小帯と言います。ほかにも頬小帯や舌小帯などもありますが、生まれつき小帯が突っ張って唇や舌の動きが悪い場合があります。この場合は小帯切除を行います。
顎関節症について
Temporomandibular Disorders
お口が大きく開かない、お口を開けると顎が痛い、お口を動かすと関節から音がするなどの場合は顎関節症が疑われます。これが時には頭痛、肩こり、めまい、倦怠感などにつながることもあります。顎を動かす筋肉は数多く広範囲に及ぶためです。
顎関節症は咬む力が関節に負担となって起こります。噛む力そのものが強かったり頻繁だったり、または歯のかみ合わせにずれがあると顎もずれて動くことになるので関節がダメージを受けます。頬杖や横向き寝などいわゆる態癖(たいへき)によって顎の関節に力が加わることもあります。
治療法は、まずは歯を接触させないように気を付けることです。常時歯が触っていることをTCH(Tooth Contacting Habit 歯牙接触癖)と言います。歯は通常わずかに離れているのが標準と言われています。常時触っている(咬んでいる)のは異常なのです。TCHには日頃のストレスも影響しているといわれています。治療としてはさらに咬み合わせの調整や態癖の修正を行います。
急に痛くなったり顎が開かなくなったりした場合は徒手的顎関節整復を行い、力で詰まった関節を伸ばすようにします。これはときにウソみたいに症状が軽くなることがあります。
TCHがある場合、多くのケースで夜の間も咬んでいて、さらに夜間はフルパワーで咬んでいます。これの一番典型的な例がいわゆる「歯ぎしり」です。この歯ぎしりやかみしめのことを「ブラキシズム」と言います。ブラキシズムに対してはスプリントを作成し、これを歯列にはめて寝ることで歯と顎にかかる負担をやわらげ、また咬む力も弱めるようにします。全体の3割ほどの方は咬んでしまうタイプであるといわれています。
- 口腔外科治療にともなう一般的なリスク・副作用
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- 症状や治療内容によっては保険を適用できますが、機能性や審美性を重視するため、基本的には自費(保険適用外)での診療となり、保険診療よりも高額になります。
- 手術後、歯肉・顎などの炎症・疼痛・腫れ、組織治癒の遅延などが現れることがあります。
- 手術後、薬剤の服用により眠気、めまい、吐き気などの副作用が現れることがあります。
- 親知らずの抜歯にともなう一般的なリスク・副作用
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- 基本的には保険での診療となりますが、治療内容によっては自費(保険適用外)となることもあり、保険診療よりも高額になります。
- 抜歯後の数日は、腫れや痛み、出血が止まらないことがありますが、多くの場合、数日から1週間ほどでおさまります。
- 下唇から下がしびれる神経麻痺を生じることがあります。
- 舌の一部または全部の神経が麻痺し、味覚も麻痺する場合があります。
- 下顎を抜歯した場合、抜歯した傷口から空気が入り、突然頬や顎が腫れることがあります。
- 顎関節症治療にともなう一般的なリスク・副作用
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- 基本的には保険での診療となりますが、治療内容によっては自費(保険適用外)となることもあり、保険診療よりも高額になります。
- 薬物療法で鎮痛消炎剤や筋弛緩剤を使う場合、胃腸障害、眠気、倦怠感などを引き起こすことがあります。
- スプリント治療やプレート治療を行う場合、装着を怠ると治療期間が長引くことがあります。
- 顎関節症は矯正治療により改善されることもありますが、矯正治療と関係なく悪化することもあります。矯正治療を行ったからといって、必ず顎関節症が治るというわけではありません。現段階で、顎関節症と矯正治療との明確な因果関係は示されていません。