歯みがきの評価の仕方(PCR)
2025年になりました。世間ではいろいろ騒ぎもありますが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
さて、今回は歯みがきの評価方法を解説します。歯みがきは皆さんどうせやっているのだからきれいにできた方がいいに決まっていますよね?でもやっている歯みがきがそれでいいのか、ダメならどうダメなのか。これがわからないとどうしていいかもわかりません。
「歯みがきをもっと頑張ってくださいね。」
なんてただそう言われたって、どうすればいいかなんてイメージが湧かないのではないですか?
そこでまずは歯科の側から歯みがきをどう「客観的に評価」しているかをお知らせしましょう。これにはPCRという方法、値、を用います。PCR=Plaque Control Record、つまり歯垢コントロール結果です。歯みがきの検査を受けたことがある方もいらっしゃると思いますが、あなたのPCRはいくつでしたか?
歯にはプラーク(歯垢=細菌塊ですよ!)がネバネバと付いています。PCRはまずこのプラークが「歯と歯肉の境目」に残っているかをみます。歯の周囲ぐるっと一周のうち、頬側・舌側・手前側・奥側の4か所をみて、肉眼で見える量のプラークが、歯肉に沿ったところに残っている、いない、を記録します。一本の歯で4か所ですから、20本歯がある人は80か所をチェックします。そしてプラークが付いていた部位の割合を計算します。
例えば全部の歯の隣接面(手前と奥)にプラークが残っていて頬側と舌側はきれいになっていたら、1本あたり2/4=50%となり、それが20本あったことになり、PCR値は全体で40/80=50%となります。お判りいただけたでしょうか?
ここで注目していただきたいのは、歯みがきの評価は、歯面のうち「歯肉に沿った部分だけしか見ない」ことになっていることです。プラーク=細菌塊は、歯面にあってもそれだけで歯には悪さをしません(HPむし歯の項参照)。物を食べた時それが菌に供給されて酸が作られると歯が溶ける。でも再石灰化されれば問題ない。つまり歯に細菌が付いていることがむし歯の原因ではないので、そこはそもそも私たちは歯みがきの評価対象にしていないのです。
しかし、歯肉との境目にあるプラークは、その存在によって歯肉に炎症を起こし歯周病(顎骨吸収)につながってしまうので、歯の健康のためにはその場所こそ評価しなければならないのです。
ですから、実は歯面の大部分(=歯ぐきから離れた範囲)は歯みがきをやる意味はあまりないのです。歯肉のそばこそしっかりきれいにしなけらばならない。ちょっとびっくりされているでしょうか。そしてその歯肉沿いこそが歯みがきがやりづらい、歯ブラシを届かせにくい所なのです。
PCRは20%を切るのが一般的な目標で、できれば10%を切りたい。この値が歯周病の予後やインプラント治療の成否などに大きな影響があることが多くの研究からわかっていますし、多くの方で実際にPCRが改善するとBOP(出血、次回解説)や歯周ポケットが改善しています。当クリニックでは検査結果の推移をグラフで表示できるのでそれを見ていただくと皆さんにこの関係性を理解していただけます。
歯みがきはほとんどの方が子供のころからやれ!やれ!と言われてやってきていると思いますが、やれと言った人がきれいにできているかをみてくれましたか?そんなことはまずないでしょう。もちろんやれと言った人も良かれと思ってそう言っているわけですが、歯みがきはやることが目的ではありません。プラークを歯面から、それも歯肉に沿ったところから落とすことが目的です。これはただ自分で頑張って取り組んでもなかなかうまくやることは難しい。私たちは歯みがき指導を日々やらせていただいていますが、これも簡単にはいかないというのが歯科医療従事者の共通認識です。歯みがき指導っていろんな意味で難しいんです(笑)。でも、できないわけでもなく、できなくて良いわけでもない。根気よく少しずつ、のんびりしっかり取り組むことで、歯みがきは未来のあなたの歯の病気を無くすことに確実につながるのです。たかが歯みがき、確かにそうなのですがされど歯みがき。どうせやるならコツをつかんできれいにできるようになりさえすれば、それが自分にとって普通になれば、決して面倒な事でもないのではないですか?例えばこう考えてみてはいかがでしょうか。
1日の疲れは歯みがきでリフレーッシュ!