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むし歯で歯並びが悪くなる?

最近は時期的に学校の歯科検診が終わって、その結果の通知の紙を持っていらっしゃる子供さんが多くなっています。

 

その診査項目の中に、「歯並び・かみ合わせ」があります。ここに印が付いている方も少なくないと思いますが、今日も定期的ケアで通われているお子さんの保護者の方からそのようなお電話をいただき、矯正治療について心配だとおっしゃっていました。実際には多くの方でさほど心配する必要がないものと思います。しかし診査項目がある以上、我々も異常と判断されるものにはそう記載しなければならないわけです。このあたりは学校検診の制度の不備と言えるかもしれません。

 

一方で普段から歯並びについて、成長期に悪くならないように気を付けるべき点もいくつかあると思います。具体的に挙げてみますので、参考にしてください。

 

1.口が開いている

いわゆる「ポカンくち」。歯がある位置というのは、実は頬とか舌とか周りの軟組織に支えられて力のバランスがとれているところになるように制御されています。口唇が閉じていないと本来唇の圧力で外側から歯を抑えている力が無くなり、前歯が出てくることがあります。

口が開いているのは口呼吸にもなっていそうです。今回のコロナ感染拡大に際しても言われていましたが、口呼吸は病原体なども直接体に入りやすいので、鼻呼吸が大事なのです。しかし鼻がいつも詰まって息ができない場合などは口を閉じたままにはできなくなります。そのような場合はお口の健康状態をまめに管理する取り組みが必要になるでしょう。むし歯などにもなりやすい状態と言えます。

 

2.舌突出癖

歯を咬み合わせて唇は横に大きく開く、いわゆる「イー」をしてみてください。その時前歯の隙間に舌が押し出されるように見えていませんか?またはゴックンと飲み込む動作をしたときに舌が前歯にぐっと押し当てられるようになっていませんか?このような癖を舌突出癖と言います。実は異常な状態です。このように舌の圧力が頻繁に前歯に加わると歯が押し出されて歯並びが悪くなることがあります。

そもそも舌は嚥下時に上の顎にペタッとくっつくのが正常な動きとされています。ちょっと気にしてみると気付けるものと思いますので、大人の方も確認してみてください。

 

3.乳歯のむし歯

永久歯がむし歯になって歯の形が変わってしまうとその歯の位置もずれますが、乳歯のむし歯のせいで永久歯の歯ならびが悪くなることもあります。代表的な例を挙げます。

乳歯の役割の一つとされるものに「永久歯の萌出スペースの確保」があります。乳歯は真ん中の前歯から5種類あり、上下左右で合計20本あります。そののち永久歯が生えてくるわけですが、多くの場合下の1番目の歯が抜けて永久歯が生えてくる、それとほぼ同時期に乳歯の後ろの6番目の場所に要の永久歯である「第一大臼歯」が乳歯最後面に沿って生えてきます。

そこから順に上、下、2番目、3番目と生え変わりが進んでいくのですが、永久歯が生えそろう前に、特に5番目の乳歯がむし歯になってそれが大きく穴になってしまうと第一大臼歯の手前には隙間ができてしまいますね。そうなると歯というのは基本的に前方の歯に寄り掛かるようにしてその位置が保たれているので、第一大臼歯が前方に傾斜移動します。その後生え変わりが進んできたとき、5番目の永久歯は生える隙間が無くなり横にずれて生えるしかなくなります。多くの場合舌側にずれます。5番目の歯が舌側に横向きになっているような永久歯の並びになっている方は大きな乳歯のむし歯があったのではないでしょうか。

 

4.生え変わり時の障害

歯の生え変わりは、乳歯の真下に永久歯が近づくと乳歯の歯根が吸収して短くなり乳歯が抜けて、そこに永久歯が生えてくるという風に進みます。ところがこの時少しだけ永久歯の位置がずれて出てくると乳歯歯根の一部分が吸収されないことがあります。するとさらに永久歯が萌出してきても乳歯は歯根の一部が残っているため抜けないので、永久歯は乳歯を避けてだんだんずれながら生えてきます。多くの場合は歯根の残留はごく一部なので、ある程度永久歯が生えてくれば乳歯は抜けてしまうのですが、永久歯は生え切ってしまうとずれた位置のままになってしまうのです。

ですので乳歯が抜けていないのに永久歯が歯肉からちょっと顔を出したら、すぐに乳歯を抜きましょう。永久歯は生える過程では位置をもとに戻すように生えてくれます。気づくのがちょっと遅くなると手遅れになるので、生え変わりが始まった方はこの点に注意して、まめにお口の中を観察されるとよいですね。本来抜ける時期の乳歯ですから抜くと言ってもごく簡単にできます。

 

5.おしゃぶり・指しゃぶり

これがあると出っ歯になるというのは論を待たないところかと思います。歯に常時強い力がかかり続けますから当然歯の位置がずれていきます。お子さんがごく小さいうちはある程度許容されるかもしれませんが、2,3歳以降はなるべくしゃぶる癖はなくせるとよいですね。

そして、前歯が出て隙間が空くとそこに舌を入れる癖も付いてしまい、さらに歯列の悪化が起こります。前述の舌突出のようなことになってしまうのです。

 

以上のことから生え変わりの時期に歯並びの悪化を防ぐ、口腔育成を図る観点で気を付けるべきことは、

・むし歯は起こさない。歯自体のためにも。むし歯の原因はHP参照。

・おしゃぶりをしない。元からやらなければ一番楽で良い。

・唇を閉じ舌の癖もつけない。鼻が悪いときはその治療も行う。

・生え変わりの時期は永久歯が出てきていないかまめに観察する。

ちょっとのところで大きく変わるのも子供の特徴です。いらぬ心配はせず、ポイントを抑えた注意を払うようにしてみましょう。